独立してフリーランスエンジニアになるときには、いまの職場を辞めなければいけません。そのときには誰もが円満退職を望みます。
このとき必要になるスキルが「退職の伝え方」です。退職理由の伝え方を間違えるといまの職場と良い関係のまま辞めることができなくなります。またいま働いている職場に対して、適切なタイミングで退職手続きを進めなければいけません。
他にも、「退職の手続き」や「実際の届出」「退職届の書き方」を学ぶことによって、スムーズにいまの職場を辞めることができます。
それでは、エンジニアが円満退職を実現するにはどのようなことに注意すればいいのでしょうか。これには、いくつかルールがあります。
目次
退職に適したタイミングを理解する
エンジニアが円満退職するには「退職するタイミング」が最も重要です。「退職したい」と伝えるタイミングはできる限り早い方が良いです。
法律では、「退職の意志を伝えてから2週間経てば、会社を辞めることができる」と明記されています。就業規則や雇用契約で「3ヶ月前まで」「6ヶ月前まで」と書かれていても、「職業選択の自由」の観点から無効になります。
この決まりは民法に明記されています。
1. 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申し入れの日から2週間を経過することによって終了する。
ただ、円満退職を目指すなら、2週間前とは言わず、遅くて1ヶ月前、できれば3ヶ月前には退職の意志を伝えておくと良いです。
フリーランスエンジニア専門のエージェントに登録することで、いまの会社に在籍しながら案件を探すことができます。案件が取れたら、フリーランスとして仕事をする日に合わせて会社を辞めれば問題ありません。
エンジニアの存在はどの会社にとっても貴重で、引き継ぎだけではなく人員補充も必要です。そのため、退職する会社に1ヶ月以上の準備期間を与えることが円満退職につながります。
退職を最初に伝えるべき人は直属の上司
エンジニアが独立するときに最初に退職を伝えるべき人は「直属の上司」です。大企業であれば、マネージャーなどの管理職、小規模の会社であれば、CTOなどエンジニアのトップに最初に伝えます。
私の場合はフリーランスになる前の会社はベンチャー企業だったため、CTOと常にコミュニケーションをとっていて、退職もCTOに最初に伝えました。
退職を最初に伝えてはいけない人が「同僚」です。飲み会の席などで、同僚に最初に話してしまいがちですが、注意してください。同僚を経由してあなたの上司に伝わってしまったときには、関係が悪くなります。
上司との関係が悪くなると円満退職もできなくなるため、最初は必ず「直属の上司」に伝えましょう。
プロジェクト期間中を避ける
エンジニアが円満退職をするには、「辞める時期」も重要です。あなたが関わっているプロジェクトが忙しいときに辞めてしまうと、上司や同僚に迷惑がかかります。「こんな忙しいときに辞めるなんて責任感のない人」と思われてしまい、円満退職から遠ざかります。
反対に、「プロジェクトに区切りがついた」「リリースが落ち着いて運用フェーズに入った」など、比較的落ち着いている時期であれば問題ありません。
受託開発会社で「常にプロジェクトを任されている」という状況の場合は、「このプロジェクトが落ち着いたら退職します」というように「特定の時期に退職する意志」を伝えておくとスムーズです。
最初に退職時期を決め、その後の予定を考える
エンジニアが独立を決めて会社を辞めるとき、まずはどのようなスケジュールで独立を進めるか考える必要があります。
このとき、最初に「退職する時期」を決めてください。どのタイミングで会社を辞めるのかを決めなければ、いつまで経っても退職できません。「8月末で会社を退職する」など、明確にするのです。
ほとんどの場合、月末で会社を辞めることがほとんどのため、「○月末まで働く」のように決めましょう。
ただ、辞める時期を決めると同時に、退職後の予定を考えるようにしてください。退職後すぐにフリーランスエンジニアとしての活動を始めることで「キャリアに空白期間」を作りたくない人は、会社にいるうちに「フリーランスエンジニア専門のエージェント」に登録し、案件を探し始めなければいけません。
貯金があり、「少し休みたい」と考えるのであれば、実家に戻る準備や旅行の計画を立てるのが良いです。どちらにしても、退職する時期とその後の計画を立てるようにしましょう。
退職の切り出し方
前述した通り、退職することを伝えるのは「直属の上司」です。遅くとも退職する1ヵ月以上前には意思を伝えておきましょう。
退職の切り出し方としては、「1対1で対面して話す」ことが一般的です。私の場合月に1度、直属の上司と面談する時間があったため、そこで切り出しました。
そのような面談が無い場合には、上司にアポを取る必要があります。「お伝えしたいことがあるので、少し時間をもらえますでしょうか。○月○日の19時からはどうでしょうか。」と伝え、アポイントを取ります。
話をするときには、「△△という理由で退職したいと考えています」と素直に伝えて問題ありません。
退職を伝えた後のやりとり
中規模以上の会社であれば、上司に退職を伝えた後は「人事や総務」とのやりとりがほとんどです。退職するときに必要な書類を作成するなど、必要な手続きの指示があります。
一方で、ベンチャー企業や小規模の会社の場合、経営者がすべてを行っていることがあります。誰とやり取りをするかは、会社の規模によって様々です。
退職届(辞職届)の書き方
退職するときに「退職届はどうやって書けばよいのか」と不安に思い、調べるエンジニアは多いです。ただ、基本的にエンジニアが会社を辞めるときには退職届(辞職届)は必要ありません。
実際に私自身も退職届を提出せずに会社を辞めました。上司に相談した後は、人事や総務の方が段取りをしてくれました。
ただ、それでも退職届の書き方を知りたい場合には下記のようになります。
退職届の書き方・注意点
- 郵便番号のない白無地の封筒を用意し、表に「退職届」と記載する
- 封筒の裏に所属と名前を記す
- B5またはA4の便せんを用意し、1行目の中央に「退職届」と記載する
- 表題から1行あけ、「私事」と記す
- 「一身上の都合」と退職理由を述べ、退職日を記す
- 日付や、所属、名前を記し、印鑑を押す
- 会社組織の最高責任者(代表取締役など)の名前を記す
「7」の最高責任者の名前については、たとえ部長に手渡す場合であっても代表取締役などの名前を記すのが一般的です。
エンジニアの場合は退職届の書き方を知らなくても問題ないですが、どうしても必要になった場合はこの書き方を理解したうえで書類を作成するようにしましょう。
退職の準備や届出をする
退職の伝え方を理解したうえで上司に報告し、実際に退職することが決まったら、辞める日までにさまざまな準備を進める必要があります。いまの職場に対して行うべきことは、「引き継ぎ」です。辞めるからといって「後のことは知らない」という態度では、円満退職になりません。
会社の他のエンジニアに引き継ぎをすることで、スムーズに退職できるようにしましょう。エンジニア不足で後任が決まらない場合、「文章でマニュアルを残す」などの対処を講じなければいけません。
また、デスクが用意されている場合はその整理をしなければいけません。問題なく後任のエンジニアが仕事を行えるように、「私物は残さない」「できる限りキレイにする」ことを徹底してください。
他にあなたが行うべき準備としては、「会社に返却するもの」と「会社から受け取らなければいけないもの」を確認しておくことです。それぞれ、以下のようなものです。
【会社に返却するもの】
- 貸与されたPC、ディスプレイ、ポケットWIFIなど
- 社員証、名札、名刺
- 健康保険証
- 定期券
- 社内資料、データ、社内情報・顧客情報が関わるもの
上記の他にも、会社から貸し出されているものや経費で購入してもらった物は返却する必要があります。人事や総務に確認し、返却し忘れる物がないようにしましょう。
【会社から受け取らなければいけないもの】
- 年金手帳
- 源泉徴収票
- 雇用保険被保険者証
- 離職票
年金手帳や雇用保険被保険者証は独立して「国民年金」「国民健康保険」に切り替える手続きの際に必要になります。
また、独立する場合には次の年の3月に確定申告をするため、「源泉徴収票」が必要です。源泉徴収票がないと、独立した年の税金を払いすぎてしまうため、必ず受け取るようにしてください。
離職票については、失業保険を受け取るために必要な書類です。離職票は離職(失業)したことの証明になります。失業保険に関係するものなので、独立してすぐに仕事がある場合は関係ありません。
退職のあいさつを行う
前向きな退職理由を伝える
実際に退職するときには、上司に「退職する理由」を伝えなければいけません。ただしその時、「伝え方」には十分に注意してください。
会社を辞めるということは、何かしらの「不満がある」ことが多いです。「収入が低い」「自分のやりたい技術に取り組めない」「人間関係に疲れた」など人それぞれです。
それでも退職理由を伝えるときには、「意味は変えずに、表現を変える」ようにしましょう。「前向きな退職理由」であれば、上司や会社に与える印象が良いからです。
例えば、以下のような言い換えができます。
・やりたい技術が使えない → 幅広い技術を身に着けてフルスタックなエンジニアを目指すために独立したい
このような前向きな理由であれば、会社側も応援してくれます。「給料が悪い」「スキルアップできない」などの直接的な理由を伝えるよりも円満退職につながります。
退職理由を伝えるときには、「意味は同じでも表現を変える」ことを忘れないようにしましょう。